終わる世界とバースデイ (コットンソフト)


総合:77    シナリオ:7 テキスト:6 キャラ:7 音楽:8 絵:7 システム:8  お気に入り:
千ヶ崎入莉


――あの日。 本当に世界が終わるなんて、誰も信じちゃいなかった。
         でも、心のどこかで、そう望んでた――

2012. 9.29 世界が終わる――

夏も終わりを告げようとする9月。
その噂は主にインターネットを通じて、世界中でまことしやかにささやかれていた。
もちろん、そんな噂を鵜呑みにしている人間はほとんどいない。 しかし信じずとも、密かに不安と期待を抱いている人間は大勢いた。
“その日に何かが起こるのではないか” という、漠然とした不安と期待を。

2012年9月29日まで、あと*日。
その日は死んだ親友の命日であり、“妹” の誕生日でもあった――






シナリオ:7


まずはじめに、シナリオについては少し踏み込むとネタバレとなってしまうのですごく書きづらいです。

とりあえず全力で終末系を訴えてくるタイトルに、話題となった若干?の残酷描写を含む体験版から「終末思想に取りつかれ‘どうせ世界が終わるなら何をやってもいい‘と理性を投げ捨てて本能のままにふるまう人間相手に予言を止めるべく奔走する主人公達」みたいなものを求めて購入してしまうと多分(゚Д゚)ハァ??ってなります。

その理由は伏線の回収の仕方にあり。

確かに予言通り世界は滅亡に向かっていきます。しかも各ヒロインによって全く異なる終焉の迎え方です。

もちろん理由もなく予言通りに世界が滅ぶ訳が無かろうと当然その広げまくった伏線の回収に期待がかかるわけですが・・・うーん。。

その余りに乱暴な回収手段には確かに驚きこそしましたが少し肩透かし食らったという感じでしょうか。個人的には正直期待していた方向のものではありませんでした。
もう少し各終末の意味とか設定の詳細について話してくれても良かったな、と。
でも一応辻褄はあってるんですけどね・・・w

その後はEDに向けて普通に盛り上がっていきます。がそれはなにも取り立てて言うようなものでもなく・・・物語の落としどころも十分予想できる範囲。
正直そのまま終わっていたら名作未満凡作以上程度の評価になっていました。
そう、最後のあのエピローグが無ければ……。


正直あの演出は反則だと思うんだ―――!!

ええ、泣きましたとも。久々にボロ泣きです。
泣けるシーンって大体「来るぞ来るぞ――」と事前に察知できることが多いんですが今回は不意を突かれたこともあって完全にやられちゃいましたね。
寂寥感に溢れながらもどこか優しく暖かいあのED最高でした。ウナトミー氏のシナリオは結構やってきましたが間違いなく過去最高の出来だったと思います。
むしろこのシーン見るためだけにプレイしてたんだといっても過言ではないほど。


終末系と言いつつもキャラの掛け合いは常に明るくテンポよく進んでいきます。ボケとツッコミが固定なので若干パターン化している節はありますが…。
ただ全体的に言えることですが描写があっさり気味なのでそこは不満かも。
特にミカシナリオは展開とかはよかったと思うんですがテキストがあっさりしすぎなので物足りなさがすごかったです。
描きたいことは分かるんだけど9.29対策協議会のメンバー間の絆を描くには一緒に活動する期間が少し短すぎました。

イチャラブ分は控え目。付き合うまでの心情描写もイマイチで気づいたら付き合うことになっていた、みたいな感じです。
えちぃも殆んど記憶にないという…wまぁそっちを期待して買う方は少ないでしょうけど。
そういえば凌辱BADエンドが一つありました。

あと気になった点と言えば「この時まだ〜となることを知る由もなかった」みたいな表現を多用しすぎるところですか。
物語の時系列上仕方ないのかもしれませんがプレイヤーが知らないのは分かり切っていることなのであれが4回も5回も出て来るとちょっと辟易としてしまいます。

プレイ時間は20時間ほど。共通ルートの後各ヒロインルートに分岐していきますがどれも割と短めで2〜3時間程度で終わります。
攻略順は入莉が最後固定なので正直誰でもいいかと。



キャラ:7

みるみるの偽妹(誤字じゃないです)だったりDQNキラキラネームにコンプレックスをもつ子だったりサブカルオタ少女だったりニートだったりと中々見かけない個性的なキャラが目白押し。

果てにはアヘ顔しちゃう元気っ子に雪都さおりん演じるショタっ子までいたりとみんなキャラはすごく立っていたと思います。

中でも弱視のため偽りの兄に頼り切ってくる入莉の破壊力ときたらもうね・・・!!!



毎朝こうして起こしに来てくれるんですよっ!天国ですかここは!?(壊
もう序盤と終盤は完全に入莉のターン



主人公:7


書けることが無さ過ぎてヤバイ
いや、印象が薄いわけではなくネタバレ的なアレですw

名前に示すこだわり、そして偽りの兄と友人と言うポジションで思い悩む姿が印象的。ただその思いを本編中で貫き通せたかと言われると微妙。
でも行動の基本原理が入莉最優先で立派にお兄ちゃんしてました。
基本常識人なので突っ込みに回りがちだった気がします。


音楽:8

あらためて聞くとED曲「happy birthday to…」がヤバい。
Airを初めてプレイした頃は「青空」のイントロがかかっただけで泣きそうになったものですが、それに近いインパクトがあります。
ただ惜しむらくはEDがこれ一つしかなく某シーンに辿り着くまでに何度も聞くことになる点。それで感動が薄まった感ががが。
もう一曲ED曲用意しといてここぞという場面だけで使ってほしかったですね…。


不安な音程のOPやBGMも基本よくできていたと思います。


絵:7

良くも悪くもコットン絵。
決して今の主流のキラキラツヤツヤしたタッチではなく、少し野暮ったい感じはします。
がむしろ昔のねこットンっぽさをそのまま引き継いでる感じなので私は嫌いじゃないです。

単独原画という事で基本安定してますが、一部CGで胸の大きさがまちまちだったり入莉おまけHでやたら幼く見えたりするのは気になりました。


システム他:8

ワイド画面対応、スキップも軽快。とは言えチャプター選択できる仕組みなのであまり使いませんが。
必要なものはそろっているので特に不満無しです。

コンフィグメニューがスマホだったり、架空のSNSがあったりと無駄に手が込んでます。
架空のSNSはブログとツイッターみたいなのがあるんですが見てるだけで普通に面白かったですね。
過去作キャラがフレンドに載ってたりするんですが小ネタ満載で知ってるとニヤッとできます。
せっかうこれだけ力を入れてるんだからもっと本編中の伏線のギミックとして使っていたら面白かったかもですね。


総評:77

いわゆる世界系を求めると荷が重すぎますが、中々よくできた作品。
アンクォの超展開に比肩しますが事前に心構えがあった分ずっと自然に受け入れられました。
上にも書きましたがエピローグ部分が逸品なのでそれだけでも見る価値はあります。

あ、そうそう。最初に誕生日を聞かれますが躊躇なく自分の日付を入れることをお勧めします。
むしろここで奇を衒うと大変なことに!?w

とにもかくにも、これだけは言わせてください。
ハッピィバースディ、イリ!!




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