グリザイアの果実 レビュー

グリザイアの果実 (FrontWing)




総合:90    シナリオ:9 キャラ:8 音楽:9 絵:9  お気に入り:
入巣蒔菜




そこは、少女達の果樹園。

彼女達は、後悔の樹に実った懺悔の果実。そんな少女達に、俺はいったい何が出来る…?

それは、一人の少年が夢見た永遠の希望──









フロントウイング10周年記念、と銘打たれた作品だけあってとにかく豪華なクリエイター陣。

有名なライターに絵師さんに加え、OP&EDでそれぞれ違う歌手が起用されているし、OPムービーもアニメのものかと疑うような出来。

シナリオもそれに負けることなく良かったと思いますが、決して問題もなかったわけではなく…。



シナリオ:8


基本的に心の闇を抱えるヒロインたちを主人公が助けてその闇を取り払ってあげる話になってます。(まぁ主人公自身も闇を抱えているわけなんですが)

学園に6人(+先生)しかいないことや、皆が少し異常性を抱えている点で某黒須チャンネルを彷彿とさせますが、実は日常会話に下ネタ満載な点もそっくりだったりしますw

その日常会話、つまり共通パートがとても長いのが難点ですがどれも非常に面白、吹きまくりでした。

普通のエロゲにないようなネタのオンパレードで、軍事ネタや下ネタをはじめよくもまぁ思いついたな、と感じるほど。
その一つ一つがよくできていて、まるで小噺やSSを読んでいるようでした。

どのキャラもいい具合にぶっ壊れていて(いい意味でですよ?)ちょっとした会話でもギャグになる様子は必見です。
ゆきうたのキャラなんかを思わせる愛すべき藤崎娘たちは最高ですね。

ただ女の子たちが平然とチンマン連呼したり、暴力的な部分がネタにされたりしているので、そういうのに抵抗がある人は体験版当で様子を見た方がいいかも?(自分は平気で楽しめましたが)
また各話の最初に主人公による掴み?みたいなのが入るのですが、毎回毎回入るので最後はちょっと辟易としてしまいそうになります。



個別に入った後、回想の形でヒロインたちの過去が語られ、そのいびつな心の闇が明らかになるのですが、私は産まれて来るべきであったのか?というのが主題だけあって基本的にかなり重いです。
共通が長かったのはあまりに重い個別パートでやめてしまわないようにキャラに愛着を持たせる狙いもあるんでしょうね。

シリアスなのは確かですが、主人公がヒロインを支えつつ真剣に向き合うので「どうやって解決するんだろう?」と一緒に悩みながらプレイできました。
また重い問題だけあり安直に解決して一件落着、とはいかず、(多少ご都合主義はあるものの)段階を踏んでじっくり解決していきます。
多分自分だったら話の半分で満足してEDに持って行ってしまいそう

その話の持って行き方が鮮やかで、あれだけ重い話にもかかわらず(一部のヒロインはともかくとして)基本的に読後感は良好なのはライターさんの素晴らしい力量によるものでしょう。


そして各√の最後には運命を決める選択肢が出てきます。
これが結構選びづらいものが多いですが、ここはあえて攻略サイトを見ずに自分で選ぶことをお勧めします
もちろん間違った選択肢(この表現がよいかは微妙ですが)を選ぶとBADエンドに直行しますが、これが(特に天音とマキナ)またとてもよくできていて色々感じずにはいられません。
ぜひ自分で正しい未来を選んでみてほしいです(何

ちなみに自分はマキナと幸はBAD直行余裕でしたwwってか幸の選択肢は間違うだろ、あれは・・・


それから上で述べた問題点ですが、一言でいうと伏線が回収しきれてない、というより回収する気がない点でしょうか。

アニメ化の話がある、と発売前から話していたように、アニメ化やFDなど後のマルチメディア展開を見越してだと思うのですが、正直気にいりませんね。まぁそれでも買ってしまうんだろうけど
ただ、それはシナリオを読む上で必ずしも必要、というものではないのでギリセーフな感じでしょうか。

個人的には何から何まで回答が与えるのではなく、明かす必要がない部分は好きに解釈してねと推測の余地を残す作品(有名なものだとAirとかかな?)も別に嫌いではないのでそこまで拒否感はなかったですが。

逆に主人公の身に過去何があったのか、といった部分が各ヒロインごとに明かされていき、すべてのシナリオを読むことで初めて過去に何が起こったのか一定の理解をすることができるという今作の手法はすごく良かったと思います。

伏線がこれ単品で回収されつくしていたら10点満点で名作の仲間入りできただろうが回収されなかったので8か9ぐらい。
あーあ、分割商法はやだねぇw


まぁ問題なのは結末が明かされないキャラがあまりに魅力的すぎることに尽きるんだろうな・・・とか思いつつネタバレ大杉につき下に続く




キャラ:8

榊由美子

最初は事あるごとにカッターで威嚇するとっつきにくいクールビューティ。

コミュニケーションをとることすら難しいただの刃物女ですが、個別に入り護衛としてまとわりつくことでだんだん雄二のことが気になっていく過程がよかったです。
いつも無表情なぶん、驚いたときや照れた時がとてもかわいく思えます

ただしOPムービー見る限りどう見てもメインヒロインっぽいですが、性格のせいもあって普段あまり会話に絡んでこないのとシナリオの方が他の娘に比べるとイマイチな気がするので期待しすぎるとしょんぼりします
黒髪ロング+ツン+クーデレというレイシア狙い撃ちの素晴らしいキャラだけにもったいない。。

彼女以外の√では主人公がヒロインを支える際に何も聞かなくても雄二を信じて計画に協力してくれるので、素直になれないだけで実は一番仲間思いで頼りになる娘だと思います。
遊園地での可愛さは作中随一でした

以下ネタバレにつき反転
とりあえず狙われているのがわかっているのに何で毎日絵をかきに行くんだぜ?
絶大な権力を誇った親父が国に目を付けられたとはいえ職を解かれたとたん完全に失墜するのはなんか無理やり感があるし、
解決したのも市ヶ谷に頼りっぱなしで雄二無双以外はあまり見せ場なかったのもさびしいですね。
ただ同じ逃避行でもライターが違うだけでマキナとこれだけ雰囲気が変わるものなんだなぁ、と変なところで感心してみたりw





周防天音

世話焼きのしっかり者でとってもビッチ。どれくらいビッチかというと豊満なムネを押し付けて誘惑して来たり、下ネタ言ったりでは飽き足らず、√に入った瞬間エロシーンの5連発。
ここで「こいつただのエッチなお姉さんだと思ってたけど実は本当にビッチだったのか・・・」と認識を新たにしたころに特に生臭いシリアスシーンに突入するんだからその落差がたまらない。そこまでライターはかんがえていた…のか?

弾けまくるマキナたちを抑えてくれたり、主人公の世話を焼いてくれたりと奇人変人が集う学園の中では異常性が見えづらいこともあり数少ない常識人の部類に入ります。特に訳あって主人公には甘えさせてくれますが、好きな声優さんという事もあってかなりいいキャラだったような気がします。・・・・・・ビッチだけど

マキナ√ではその母親役を務めるように、お節介なお母さんみたいな印象が強いです。

そして一見しっかりものだけど、その裏に見え隠れする脆さがとてもいい感じに表現されていた気がします。彼女のルートを見た後で改めて彼女との会話を見ると、納得できる部分があったりします。

怒涛のエロシーンに続き過去の回想が入るんですが、これがなかなか強烈です。極限状態における人間の姿が描かれているんですが、それがかなりじっくりと尺をとってある分とても生々しく、人によっては拒否感を覚えるんじゃないかとも思います。電気を消してプレイしていたんですが結構怖かったです。

その時の罪を贖罪して生き続ける彼女の姿が描かれるんですが、最後EDがかかった時には思わず泣きそうになりました。まさかあそこまで描くとは…。。
ただその前に入るあのオッサンは正直蛇足な気がしました。

EDはトゥルーもバットも味があって、ちょっと色々と考えてしまう終わり方になっています。

以下ネタバレにつき反転
最後がまさか人生の最期まで語るとは思ってもいなかったですが、本人が一姫を見捨てたことを罪だと信じ続けており、死して初めて罪から解放されるというあれでよかったと思います。
「生きることが償いだ」という雄二の言葉は一見厳しく思えますが、あれは雄二に尽くすことが生きがいになってしまっている天音に、いつ死ぬかわからない彼が死んでしまった時に後を追って安直に死を選ぶのを防ぐための言葉なんじゃないでしょうか。
結局雄二が仕事で死ぬことはなかったですが、結果として彼女は幸せに生き天寿を全うし、今度は何も背負っていない状態で雄二に再会する・・・。
天音は自責の念以外何の罰もうけることはなかったことで雄二のたくらみは成功したんじゃないかと思います。

またBADも身代わりとなって死んで解放された、という表現からライターが天音が解放されるにはこれしかなかった、と言っているようにも思います。

そして天音ルートといえば一姫ですがそれはまた下で思いのたけを語りましょうw





松嶋みちる

ツンデレになりきれないツンデレ、UTこと嘘ツンデレ

とりあえず全く空気を読めなかったり、マキナや幸からの扱いがさんざんだったりと色々な意味でかわいそうな娘。
あらためて思い返すと幸に適当にあしらわれたり、マキナに倒される姿しか思い出せないw

そこまで好きになれなかったせいもあって印象は薄いですが、個別√では想像以上の純粋な姿を見せられます。

あとEDがとても希望にあふれた明るい感じだったのと、ちょっとこった演出があったのが素晴らしいです。




入巣蒔菜

比類なきアホなロリっ娘。というか口の悪さが半端ないです。卑語に暴言は当たり前。しかもやることはムチャクチャと、一歩間違えばウザすぎるキャラになりかねないのにそれがかわいく思えるんだから不思議

某史上最大に使えない妹を彷彿とさせられ、個人的にはとても好きな子です。「〜なのよさー!」って口調が思わず移ってしまいそうw
いつもいつもトラブルの中心にいて笑わせてくれます。

ちなみに主人公への態度が大きく3度変わります。最初転校してきたばかりの主人公には警戒心丸出しで臆病な小動物っぽいですが、一度心を許すと「お兄ちゃん」と呼んで甘えてきます。もちろん後者が素のマキナの姿なのでしょうが、そのあまりの変貌ぶりに「マキナってこんな子だったっけ?(^_^;)」とおもわず首をひねってしまいました。
最初の頃も可愛かったのに。

そして個別ルートではお兄ちゃんがパパへと昇格するわけですが、これが・・・・・・イイ(・∀・)!!

父親を亡くし、残った家族にも冷たく当たられていた彼女は主人公に父親を求めてくるんですが、その甘えてくる様子が可愛すぎます

もっとお兄ちゃん兼パパに甘えてこい!!!


主人公も主人公なりに精いっぱい理想のパパであろうとするので、母役の天音も含めて、3人でお互いの事を思いあってまるで本当の家族のように過ごすシーンが最高でした。

シナリオは由美子とかぶりがちなんですが、こっちは本家に雄二が言葉通り立ち向かっていくのでこちらの方が緊張感があってよかったです。

EDが天音に負けず劣らず何とも言えない出来になっていて、特にBADのほうはちょっと背筋が冷たくなりました。
トゥルーの方も手放しに良かったといえる結末ではないですが、別にハッピーエンド至上主義者ではないのでこれもありかな、と(一応夢はかなえちゃったわけだしねw)
ちなみになぜかどちらでもEDが流れるのですぐには正解の選択肢だったのかわかりません。

あと付き合い始めた直後に始まる「雄二とマキナのあれって、ぶっちゃけどーなの会議」はおもわず吹き出しましたw


以下ネタバレにつき反転
BADの妊婦でしかも錯乱した状態でスナイパーが勤まるのかはともかく、トゥルーの最後の「まだ頭は痛くない」って表現はかつての主人公の時と似ていて少し怖いですね。最後も銃声で終わる辺りもなんとも。。

ところで命がけで持ち帰ったあの苗、結局EDで特別語られるわけでもなかったですね…。ううむ





小峰幸

言いつけならば不可能をも可能にし、何でもこなすスーパーメイド。どれぐらいすごいかというと十徳ナイフより幸を持て、という名言が生まれるほど。
でもなんか、掃除してる姿とみちるの世話&突っ込み役という印象が強いです。誤植プレイ+とマグロマンは最高でしたが

ルートに入ると、実は・・・!!という展開になります。ちょっと無理やり&やり過ぎ感はあるもののかわいかったので許す(ぇ

最後はベタですが温かいお話なのでちょっと感動してしまいました。








橘千鶴

どう見ても学生にしか見えない美浜学園の学園長。主人公に昔助けてもらった借りがあるらしく、命の恩人と言っている。
そのせいで主人公から色々と無理難題を頼まれたり後始末を任されたりと色々大変な目に合っている苦労人。

主人公の事を異性として少なからず気にしているそぶりが見えたりと、ただのサブキャラにはない可愛さを持ちます。
もうちょっと若ければ図書委員として校内にいても何の違和感もなかっただろうに・・・。

主人公との出会いの事件が結局描かれないのが少し残念。






J.B.

風見雄二の現養親であり、アルバイト先の上司 を務めている金髪のおねーさん。

雄二の事をいつも気にかけてくれていて、情をはさめない仕事であるにもかかわらずどの√でも最大限の手助けをしてくれます。
彼女と雄二、そして師匠の話が見たかったですね。







風見一姫

主人公の姉にして色々な意味で本作最大の問題児。あるキャラのルートでしかほとんど語られることのない存在だが・・・

以下ネタバレにつき反転

一姫かわいすぎだろおぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおーーーーーーーーー!!!!!!!

正直彼女の存在があったからこそ天音ルートを最後まで読めた気がしますw声が青山ゆかりさんということもあって本当に魅力的でした。

「鬼は連れていくわけにはいかないの」というセリフが特に印象的。

結局彼女は生還することができたんでしょうか?いかに難しい事でも彼女なら涼しい顔でこなしてしまいそうですがはてさて。
突然登場する地下室の天才犯罪者はほぼ間違いなく彼女の事だろうから何とか生還したんでしょうね、うん。・・・そうであってください。

回想だけでなく本編に出ていたら間違いなく最高のキャラになっていたであろう逸材だけに惜しいですね。FDはでるのかなぁ。。

ルート後にあらためて天音や主人公の言動を見ていると、しっかりと一姫の教えが受け継がれているんだなぁ、とちょっとうれしくなります。




主人公:8

 

風見雄二

色々とワケありな本作主人公ですが、軍事ネタやアメリカでの経験をはじめ様々な薀蓄をもっており、突拍子もないことを始めたりと読んでいて飽きません。
基本的に何でもこなし、フルメタの宗介を常識人っぽくした感じでした。

ちょっと鈍感ではあるものの、各ヒロインの抱える問題に真剣に向き合っていき、バイト先での経験を生かしてなんとしても彼女たちを守り抜こうとする姿はかっこよかったです。

ただ彼という人間を語るうえで欠かせない`師匠`に関する話がほとんどなく、想像するしかないのがすこし不満ではあります。

ホームページのキャラ紹介が彼の視点で書かれていて、面白いうえに作品の雰囲気をつかむのに最適なので未プレイの人は一度覗いてみるのをお勧めします。

音楽:9

信頼のElementsGardenに抜かりなし
どれも素晴らしい出来で話を盛り上げるのに一役買っています。
特に「君のいる街」はお気に入りだったり。

そして何よりOP、EDの豪華さでしょう。飛蘭、佐藤ひろ美、NANA、eufonius、橋本みゆきとエロゲ界の歌姫結集させてます。
なかでもOPの「終末のフラクタル」はムービーのできも相まって個人的に久々の神OP。何回もリピートしてます。後半部のSDキャラによる部分がとてもかわいいです。

EDではみちるの「Skip」がお気に入り。本作には数少ないポップな明るい曲調で希望が持てる感じがいいです。





絵:9

渡辺氏とフミオ氏の描くキャラクターは素晴らしいの一言。塗りもとてもきれいです。
CGも要所にきちんといれているので特に不足は感じなかったです。

サブキャラのほとんどにちゃんと立ち絵があり、特に天音ルートではその多さに驚きました。感情移入するうえであれは絶対あってよかったと思います。

そしてところどころに挟まれるコミカルなSD絵がとても可愛らしく、平穏な学園生活を盛り上げてくれます。
てかサメポーチを付けてる主人公が可愛くてやばい





その他

システムは使いやすく良好。少しオートモードが使いづらかった気はします。
クリア後にムービー鑑賞があったりおまけがあったりするのもいいです。システムボイスのニャンメルは笑ったw

またキャラクターが動いたり、汗や怒りのエフェクトが入ったりと見ていて飽きないですね。




 

総評:85

シナリオ、絵ともに高レベルで、文句をつける点は無回収の伏線ぐらいです。こうやってレビュー書いてると改めて共通のギャグをもう一回読みたくなってきましたw
伏線を回収する気があるのか、またどのようなメディアで回収するのかは気になりますが、とりあえずこの作品だけでも一応完結しているのは確か。そのあたりに深くこだわらない人なら全然大丈夫だと思います。

しかしギャグの方向性や重い個別シナリオに抵抗を持つ人もいるかと思うので、けっして万人にお勧めできる作品ではないと思います。

ちなみにかなり長いです。とくに共通が。

でも自分はクリックが止まらないほど作品の世界にのめりこみましたし、プレイ後もやって良かったと思えるので、普通の学園モノに飽きた人なんかに是非やってみてほしいです。


FDでないかなぁ・・・

オススメ攻略順はとくにありません。好きな子から攻略すればいいんじゃないでしょうか。
ただ最後に幸かみちる、天音辺りを持ってくると幸せに終われかも
マキナBADを最後にやるともうひどいことになりそうw


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