未来ノスタルジア (Purple software)

総合:85    シナリオ:8 キャラ:9 音楽:8 絵:9 システム:8  お気に入り:杏奈


幼なじみたちと平穏に過ごす主人公・工藤陽一。
少しだけ人と違う力、手を触れずに物を動かす程度の超能力を持つものの、それ以外は他人と変わらない生活だった。

――彼女が現れるまでは――

「私は杏奈――。未来のあなたにフられた女よ」

さあ、行こう。 未来で、なつかしい君が待っている――






パープルソフトウェア、と聞いて思い浮かべるのは「あると」や「明日の君に逢うために」のOPで魅せた素晴らしいアニメーションに、ちょっぴりの不思議要素とピュアな恋愛で描かれる手堅いシナリオ、動く電車の吊り皮や水の表現といった素晴らしいエフェクトでの表現なのですが、実はこれは今から4年も前の作品の話。
最近のパープルはというと主力タイトルであった四季シリーズも綾乃を非攻略にするという愚策のためか春色はコケてしまい、
姉妹ブランドの評価もすこぶる悪いという優良メーカーだったのがもう遠い過去の話であったような印象を受けます。
しかし近作のはっさくこと初恋サクラメントが(自分は未プレイだが)割と好評だったことで、紫復権なるかと密かに期待していたのがこの未来ノスタルジアでした。

しかし発売直前にはライターの鏡遊氏が辞めさせらたみたいな話をツイッターでしており社内でのゴタゴタが表沙汰となってしまったこともあって、なまじ期待してたぶんもう不安で仕方なかったのですが、原画の克氏の何とも言えないエロさを醸し出す絵が大好きという事もあり結局購入に至りました。

そんな不安半分期待半分でプレイした結果・・・・・・

普通に泣かされてしまいましたよ(ノ∀`;)

「やって良かった」とプレイした後に感じられる作品、というのが良作と信じて疑わないレイシアですが、これはそう意味でもまごうことなき良作でしたね。


シナリオ:8

運命を変えるため未来からやってきたという杏奈の出現によりにわかに騒がしくなった主人公の周囲の人間関係が変化していくという一見よくあるタイムリープものですが、
その実中身はSFファンタジーでも超能力バトルでもなんでもなく、主人公の事を思う杏奈の一途な思いが生んだ純愛物語でした
ということでメインヒロインはもちろん杏奈なわけですが、この杏奈√の見せ方が逸品で本作に深く共感することができた要因になってます。

Trueエンドと言える杏奈√は最初ロックがかかっており、他のヒロイン4人の話を見た後に初めてプレイすることができます。
杏奈の目的は主人公に降りかかる災難を除き、幸せに人生を送ってもらう事なのですが、
主人公とヒロインが付き合うために、また付き合った後に生じる障害を取り除くために我が身を厭わず裏から支えてくれる杏奈の姿を4回は目にするわけです。

するとここで生まれるのは当然の疑問。杏奈自身の幸せはどうなるの?と。

こうして杏奈への想いが十分に高まり、感情移入したところで突入する杏奈√ではいくつかの謎が明かされ、彼女の思いの深さがそのきっかけとなる出来事とともに丁寧に描かれています。
それらに触れた上で、さらに終盤にはグッとくるシーンのオンパレード・・・。もう何度泣かされそうになったかわかりません

マルチエンディングを取ることのできる美少女ゲームというメディアを最大限に生かしたこの一連の流れが素晴らしく、読んでいて本当に上手いと思いましたね。

問題点を挙げるとすれば、杏奈√とあと次点として伊織ルートは素晴らしいのですが、一方で他のヒロインの話が大きく見劣りしてしまうところでしょうか。
Trueシナリオがあるゲームというのは往々にして本流であるTrue以外の話が軽く扱われがちなのでこの弊害は仕方ないとは思いますが、双子√の話はそれを抜きにしても酷かった気がします。
あれだったらむしろ双子を一つのルートにまとめて、かなたんの話をだな

あと日常のテキストがそこまで面白くないためだれてしまうところですね。
いや、やってて普通に面白かく感じた部分も少なくないのですが、どこか主人公と周囲の人間のいわゆる身内ゲーでパターン化している節があり、最後の方ではそれに多少飽きてしまった感があったのは確かです。

テーマは「仲間たちとの絆」でしょうか。
女性陣がみんな主人公に好意的なんですが、詩以外はそれほど依存しすぎているわけでもなく、時には逆に主人公が弄られるくらいなので、主人公が何やっても拍手喝采のハーレムゲーに比べて非常に感情移入しやすいのは素晴らしいところです。
上で述べたように若干冗長ではありますが、仲間たちとの騒がしくも楽しい日常がとても丁寧に描かれていたため、杏奈が守りたかったモノに説得力を出すことができていたと思います。
これがなければ杏奈が未来から突然やってきて自分の信じる幸福を押し付けようとするただのエゴイストに映っていたかもしれないですしね。


プレイ時間は約30時間弱。
メインヒロイン4人の個別は各5時間程度で終わりましたが、メインである杏奈√は長めでその2倍くらいかかりました。


突然主人公、陽一の前に現れた少女、杏奈。彼女は未来の陽一にフラれたというが・・・。




キャラ:9


杏奈

陽一の前に突然現れた少女。未来の陽一にフラれたと話し、意味深な発言や助言を残していく。
登場時こそミステリアスな雰囲気を漂わせておきながら、陽気なテーマソングにフランクでぶっ飛んだ言動、風音様のCVのせいもあって早々にそんな幻想はぶち壊されますw
陽一たちのグループへの絡みは控え目ですが、その大きな胸のせいもあり序盤から存在感は抜群です。

各ヒロインルートでは自分も陽一が大好きなのにそれを抑えて二人の仲がうまくいくように(某ルートでは逆ですが・・・)恋のキューピッドの役割を果たしてくれるいい奴です。

元々陽一をからかいつつも何かと助けてくれる杏奈を嫌いになる理由がないですが、彼女のルートでは杏奈がいかに陽一の事が好きで大切に思っているか、そしてどれだけの覚悟をもって時代を超えてきたのかがとても丁寧に描かれており、そのひたむきな想いを知ると杏奈が愛おしくてたまらない存在になっていました

そのせいもあって終盤に繰り広げられるクロとの別れや杏奈との結婚シーンに早めの卒業式などなど、切なくも暖かいイベントの数々に涙がこぼれてしまいましたね。

最後も杏奈らしいすっきりした終わり方でよかったと思います。あれだけの想いを前にしてご都合主義云々言うのは無粋ってもんですよ!

以下深刻でないネタバレにつき反転

未来での杏奈の姿(ロリ杏奈)が出てくるわけですが、この娘がもうね・・・・・・可愛すぎるのよ!!
久々に魂持って行かれましたよ、あれは・・・。
ちょっと前までツンだったらしいけど陽一を信頼してるのが見え見えで言動のすべてが見ていて微笑ましいです。
詩やハルさんに取られまいと立ち向かっていく姿を眺めているともうニヤニヤしっぱなしでしたw
あと制服姿も滅茶苦茶にあってましたね・・・。着る機会が少なかったのが残念すぎる。。
まったく陽一はどこからあんないい娘を連れてきたのやら・・・w
私に杏奈を下さいお願いします





羽鳥 詩

実は有名電機メーカーの社長令嬢なのだが、趣味はゲームで勉強嫌いという、英才教育の結果は全く出ていないというおっとり系幼なじみ。
最初から最後まで陽一たちのムードメーカーになってた気がします。
普段はやる気ないけど陽一と一緒に過ごすことが最優先目標となっており、そのためならばどんな苦労もいとわない残念な子です。
勉強はわからない、運動もダメだけど主人公に甘えさせたら世界一、というくらい所構わずベタついて来ますがそこがまた「守ってやらなきゃ」という保護欲に駆られます
あまり見ないタイプの幼なじみですが、個人的には杏奈の次に伊織と並ぶくらい好きでしたね。
皆から姫と呼ばれて可愛がられてるんですが、仲間たちから本当に大事にされていて、それがまた詩を甘やかす結果になっているんですけどね・・・。

シナリオは結ばれた後の展開が結構強引だったりしますが、逆に詩の不安定さあらわれなのかな・・・と思ったり。
ちなみに某ルートでは無事大人になった彼女の姿が見られます。うーむ、人間変わればあそこまで変わるものなのか・・・。
そこを見ても詩が如何に陽一という存在に依存しているかが分かりますね。





春日 伊織

陽一のクラスメイトで神社の娘。杏奈と同様に超能力を使いこなす。
他人に優しく口調も丁寧で、一見すると優等生に見えるのだが、なぜか主人公に対しては敵意を露わにする。
初登場からいきなり銃口を突き付けてくる電波な巫女さん・・・
にしか見えないんですが、その理由は彼女のルートで明らかになります。
陽一相手に毒舌を吐いて命を狙って来ますがそれすらどこかしら照れ隠しである部分が見え隠れして、不快になることはありませんでしたね。むしろ事情を知ってからだと逆に微笑ましくなるというw
お話としては実は昔会ってた幼なじみでした!ということから結ばれて、その思いの強さから力が暴走するっていう展開が自分の中では伊織というキャラと妙に符合していたため違和感なく受け入れられましたね。
ハルさんが倒れた時にはどうなるかと思いましたが、無事に幸せに終わることができてよかったです。
ちなみにクリア後CGを見ているときに、杏奈が陽一に見せた未来の倒れた伊織を抱きかかえるシーンと、終盤伊織を止めるために力を使い果たした杏奈を抱きかかえるシーンがシンクロしていることに気づいて衝撃を受けました。

ところで裸エプロンのCGはあるのにそのままえちぃに突入しないというのは何なんでしょうね・・・もう全裸待機していた自分に謝れと(最低




工藤 野乃

陽一の義理の妹で、双子の姉の方。
その容姿と性格、そして陸上部のエースということもあり、学園ではアイドル的な扱いだが、本人はそんなことなどお構いなしで陽一にベッタリ。積極的なスキンシップを求めてくる。

妹が大好物な私ですが、この工藤姉妹については本当にポッと出の印象が強く、昔から好きだったといわれてもCG一枚ではそれほど感情移入できなかった、というのが実情だったりします。
シナリオも走れなくなるという杏奈の予言が突然すぎて、全体としてとってつけた感がありありでした。
まぁまだ超能力で主人公が頑張るだけましだったのですが・・・





工藤 日奈乃

主人公の義理の妹で、双子の妹の方。
非常にしっかり者で、家では自ら進んで家事の一切を請け負っているため、よく姉と間違われる。素っ気ないように見えるが、家族のことを大切に想っている。
彼女の話に至っては突然アイドルデビューしてしまった妹とマスコミ相手の逃避行が描かれますが正直未来ノスタルジアでやる話ではなかったなと・・・。

言えない・・・むしろ途中で挟まれるかなたんとのデートイベントの方に目が行ってしまったなんて。。
ともかくこの二人のルートを作るなら、一つにまとめるか、もしくはそれを取り去ってでもかなた√が欲しかったというのが正直な気持ちです。





真田 かなた

陽一たちの幼なじみで、商店街にある洋食屋 『はなればなれ亭』 の看板ウェイトレス。
桜星学園では学生会に所属し、副会長の役職も務めている。
なにかと貧乏くじを引く体質で、トラブルの解決に奔走する日々を送っている。

またか!また紫はヒロインより魅力的なサブキャラを出してプレイヤーを悶々とさせるのを見て喜ぶのかと邪推してしまう程かなたん可愛いよ!
普通にできるこのはずなのに最終的にはなぜかいじられ役に甘んじてしまう姿が良いですねw登場機会もヒロインズ並みに高くて、まさにムードメーカー的存在となってます。
これで攻略ヒロインにしないとかどんな判断だ!

FDが出るなら絶対買いますが、春色桜瀬の綾乃FDが未だに出さないところを見ると確実に出るかどうか怪しいのでそこまで期待しないで待っておくことにしますw




そのほかに雫先輩や冬弥、ハルさんに映さん。そして本作のマスコットキャラであるクロなど魅力的なキャラクター達が多数。
男性陣は主人公を含め基本いじられる側に回ってしまうのがちょっと珍しいかも。
彼らの誰が欠けても杏奈の求める未来にはならないでしょうし、本当にかけがえのない仲間たち、と言えるでしょう。









主人公:7


工藤陽一

杏奈に、詩に、伊織に、妹にと超モテモテハーレム空間の主である主人公陽一君ですが、主人公としての魅力が際立っていたか?と聞かれると少し悩んでしまいます。
確かに未来での陽一はかっこよかったし、詩との出会いのきっかけの時なんかはすごく頑張っていたんですが、どことなく軽い印象を受けてしまいます。
まぁこれは雫先輩に完全に頭が上がらず使われてしまうことが多いのもそう思わせる一端になってる気はしますが。。

とはいえ言うときには言うし、やるときにはきっちりやる点は主人公として十分評価に値すると思います。




音楽:8

OPである未来ノスタルジアはイントロを聞くだけで様々な予感が胸に浮かぶ名曲。
調べてみるとそれもそのはず、安瀬聖氏作曲だったんですね・・・納得。

ちなみにプレイ後に改めて聞くとその歌詞に秘められた思いで少し泣いてしまいそうになります。えぇ曲や・・・。
最近だとまどかマギカのコネクトがそうだったのですが、普通に聞いても良曲だけど全てを知ったうえで聞くとその歌詞に込められた真意が理解できる曲っていうのは深みが増してものすごく愛着がわくんですよね。

ほかにもEDの未来図はもちろん、杏奈のテーマである`SAKURA precognition`と`幾億の想い`、`I wish for`なんかはプレイ後余韻に浸りながらしばらく流し続けていましたね・・・。

全体的に雰囲気にマッチしていて音楽も高レベルだったと思います。


絵:9

原画は克氏とsiki氏のお二人が担当。

克氏はCG集などでそのそこはかとないエロさが感じられる絵を拝見していて大好きだったのでステルラエクエス以来のゲーム原画をされると聞いた時には思わず小躍りしてしまいました!
世間では尖りすぎとかなんとか言われてるみたいですが、いいんだよ!ロケットで何が悪い!!と逆切れできそうなエロさでした(´Д`;)

相変わらずえちぃ絵はむっちり感がすごいというか、いろいろと半端ないですね。。
随所にカットインが多用されており、それがまた一段とエロさを引き出していたように思います。
塗りも非常に丁寧で、えちぃ絵に目が行きがちですが普通のイベント絵も綺麗なものが多かったですね。

複数原画によくあるキャラクターの違和感もほとんどなし。これはおそらくsiki氏とグラフィッカーの方の頑張りの成果だと思います。
背景も時間ごとの差分もよくできていて、絵については乱れることなく、本当に言うことなしですね。

ところでヒロインは基本的に全員体操服の立ち絵があるのですが、そこから体操服えちぃを期待していた変態紳士は私だけではないはず・・・ないよね?(チラッ

にもかかわらず結局ゲームを通して一回もないってどーいうことなの!?

杏奈や伊織の体操服姿なんて立ち絵だけで興奮する見入ってしまうのに・・・シナリオ的に普通にできそうなのにこれだけは本当にもったいないと思いますね・・・・・・
むしろ野乃にすら無かったのは意外だったというね・・・



システム他:9

流石はパープル、出来ないことの方が少ないような素晴らしいコンフィグ。
フォントやマウスカーソルなんて最後までデフォルトのままだったし、使いこなせてない感すらありますw

一方で今回はエフェクトの方は控え目。噴水や湖の水、炎は相変わらずすごかったですがそれほど多くはありませんでしたね。

むしろ会話の際人数が多い時に、基本的には顔つきの吹き出しで行われることが多いのですが、たまにキャラの立ち絵に視点が移動するのは勘弁してほしかったですね。
画面に大体3人ぐらいしか入らないのですが、画面に映ってない人がしゃべるときにそっちに画面を切り替えてしゃべるんですよね。で、それにこたえるためにさっきまで映っていた方に画面が切り替わって・・・という風に会話がなされるんですが、これはひどかった。。ちょっと酔いそうでした。
せめて視界がちょっとスライドするくらいならいいですが、いちいち暗転するもんだからテンポも何もないです。

それ以外は概ねよかったと思います。
カレンダーであらすじが見れたり、そこに戻れたりするのもなかなか。


総評:85
いつもの紫らしさとは少し違う気はしますが、高水準でまとまった良作でした。
程よく萌えて、感動できるという、どちらかというとキャラゲー寄りのシナリオゲーだった印象です。
なんにせよ良くも悪くも杏奈による、杏奈のための作品であることは間違いないので、どうしても彼女が好きになれない人には厳しいかもですが、そんな人は少数派でしょうし割と万人受けしそうな気がします。

細かいことを言い出すときりがないですが、そこは杏奈のような純粋な気持ちでプレイすると素直に感動できるんじゃないでしょうか。

しかしやっぱり克氏の絵はいいものだ・・・また原画やってくれないかなぁ。

というかこれはもう是非FDをだな・・・とは思うものの一悶着あったライターさんを変更するなんて愚策をとる可能性も無きにしも非ずなわけで・・・。
なんにせよ次の一手が紫が復権することができるかどうかを決める試金石になってる気がします。

最後に、未来ノスタルジア・・・未来なのに郷愁??という一見わけわからないタイトルですが、プレイするとなんとなく納得できてしまう不思議!
本当に上手いタイトルをつけたものです。

オススメ攻略順杏奈が√固定なのでともかくとして、双子⇒詩⇒伊織とプレイしていくのが一番自然なんじゃないでしょうか。


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